AIの次は、「流体の時代」が来るかもしれないという妄想


この記事に書くことはただの妄想でしかありません。

でも、自分にとって将来に起きなさそうなことや、起きるかどうか分からないことについて考える方が楽しいので、書いていこうと思います。

自分の考えについて語ることは簡単ではありません。自分の直感のようなものを語るには多くのバックグラウンドについての説明を必要とします。なので、10年以上前の話からしていこうと思います。

私が、3DCGのキャリアを始めたのは2009年、専門学校に通い始めた時でした。

高校時代、進学校で勉強について行けなくなり中退に近い形で高校を辞め、落ちこぼれたと感じていた私でしたが、3DCGデザイナー向けの専門学校の中ではプログラミングや数学への適正が周りよりもある方だとも感じていました。そして、私は「テクニカルアーティスト」と呼ばれる職業を目指し始めていました。

テクニカルアーティストとは、3DCGデザイナー職の中でも、プログラミングやスクリプトを得意とする人達が就く職業です。キャラクターや物体を動かすために仕組み作りをしたり、映像内での水や煙や炎といった「流体」を表現するお仕事です。

2009年当時のコンピュータは、2023年となった今よりずっと貧弱でした。3DCGの仕事は明らかに他のPC作業よりもコンピュータパワーを使う作業だと感じていました。そんな3DCGの中でもとりわけコンピュータパワーを必要としたのが、「流体」の計算だったのです。

映像作りの中で、流体表現というのはとてもカッコいい仕事の一つであり、私にとっての憧れでもありました。爆発だったり、水の表現だったり、そういったものへの憧れはあるものの、とてつもなくPCが重く、たった1秒の煙を動きを作るのに数時間を要することもありました。

仕事で流体に触れる機会もありましたが、当時の自分にとって、「とても自分にはコレは出来ないな」と感じるものでありました。教え方も体系化されておらず、流体をうまく扱えている3DCGアーティストの人達も、直感的に扱えてるだけという印象を私は持っていました。

そして、私は流体やエフェクトという仕事は諦め、キャラクターを動かすための仕組み作りである「リギング」という仕事に移っていくことになりました。

その後、私は3DCGの仕事を辞め、大学で機械制御系の学科に入学することになりました。すると、そこでも私は「流体力学」という学問に出会うことになります。

機械工学の世界において、流体を扱うことは非常に重要な一分野です。例えば、ショベルカーのような機械は、「油圧」という流体を使って制御されています。

機械制御の学科に入る中で、私は流体への興味がまた盛り上がってきました。先生が優しそうだったからというのもありますが、研究室は流体力学の研究室に入りました。

流体への興味を高まると同時に、大学在籍中の私は、AIの時代が訪れていることに私は気づき始めていました。2012年のディープラーニングの進化が、GPUによる計算速度の向上によってもたらされているということに私は着目しました。

AIを含め、近年の技術革新の多くは、コンピュータの高性能化によってもたらされています。

文字しか表示できなかったコンピュータが、画像を表示できるようになり、動画を表示できるようになり、3DCGも表示できるようになっていきました。

そんな中、流体というのはコンピュータの中でも最も計算コストを必要とする分野のひとつです。

天気予報も流体の動きを計算して予測されているようですが、スーパーコンピューターなどを使って流体の計算をさせているようです。そんなスーパーコンピュータを使ってさえも、天気予報が外れるというの事実が、どれだけ天気予報の流体計算が難しいものであるかを物語っています。

しかし、今後もコンピュータの計算速度ははどんどん進化していくはずです。量子コンピュータなど、計算速度を向上させる可能性のある技術の芽が出てきています。

すると、流体の世界にも多くの技術革新があるのではないかと私は妄想をしており、それが楽しいのです。

私が3DCGの専門学校時代に描いた絵コンテがありました。水が周りから集まってきて、それが剣の形になり、戦うというものでした。作るのが難しいから辞めとけと先生から言われ、却下されましたが、今でもそのアイデアは頭の片隅に残っています。

「人間が頭で想像できることは、すべて実現可能である」という考えが世の中にはあります。実際問題、技術の進化に伴って、多くの不可能に見えたことが実現をしてきました。自動車、飛行機、コンピュータ、インターネット、電話など、どれも大昔から考えると夢のような技術です。

私はアニメをよく見る人間ですが、例えばNARUTOの世界では、水を忍者が自由に操ってドラゴンの形にしたり、風を手のひらに集めて手裏剣にしたり、流体をコントロールする表現が溢れています。

私は、実はこういうとんでもないことが、流体力学の発展と共に、現実の世界でも実現出来るような日が来るのではないかと予想し、妄想してワクワクすることがあります。

それがどんな形で訪れるのか分かりませんが、AIの進化がコンピュータの計算性能に依存したように、流体の進化もコンピュータの計算性能の進化と共に訪れるのではないかと、そんな妄想をすることが日々の楽しみのひとつです。

ちなみに、研究者である落合陽一氏は、流体ではないですが、「超音波で物体を浮遊させてコントロールする方法」を過去に発表していました。

 

こういった研究は、将来的に流体のコントロールにも繋がっていくのではないかと個人的に思っているのです。

そして、おそらく落合陽一氏もそれに近いことを考えているはずです。

何かの番組で、彼が「流体がもっとコントローラブルであって欲しいって思うこととかないっすか?」と話している場面を私は見たことがあります。しかし、そもそも流体という単語があまり世間一般に浸透した単語ではないためか、対談相手にはその意図があまり伝わっていなさそうだな・・・とは思いました。