物理的な距離の重要さ「オンラインサロンと位置情報SNS」


ここ10年くらいで、インターネットが飛躍的に成長し、世界中どこに居ても人が繋がれるインフラが整いました。

世界中の人々や情報が自由に行き来できるようになったのは、もちろん素晴らしいことでしょう。

 

その一方で、いくつかの良くない側面もあります。

ネットで色んな人と繋がったものの、その結束力は非常に弱いというのは1つあると思います。

私自身、ここ数年でネット上でお世話になった人や、仲良くなった人にも1度も会ったことがなかったりします。

気軽に会おうとも言いやすい環境とも思えません。

 

また、気軽に会えないでいると、自分の考えをうまく伝えられないなと思うことが多々あります。

1対1で、会って話すことが出来たら、自分の考えていることなどをスムーズに伝えられるのにそれが上手く行かず

どうしてもTwitterのエアリプみたいなちぐはぐなコミュニケーションが中心になりがちです。

エアリプ合戦をしていると、どうしても誤解が生じやすいと感じています。

 

また、SNSでグローバルに人々が繋がれるようになった結果、「自分」との比較対象が世界中の人になり

関わったことのない人やモノとまで比較をされるようになっていきました。

多くの人やモノと比較がグローバルレベルで起きることによって、気が休まることがない心理的な安全性の欠ける空間になってしまっている側面もあります。 

 

・「閉じる方向性としてのオンラインサロン」

インターネットで世界中と繋がれるようになった反動なのか、今から数年ほど前には「オンラインサロン」というものが流行しました。

 

具体的に、オンラインサロンの流行は、岡田斗司夫氏が最初に作っていた「岡田斗司夫EX」というサービスを堀江貴文氏が真似し、それが広まったものと私は考えています。サロンが有料であることによって、メンバーが限定され、少人数制になるので濃いコミュニケーションが取れるという思想の1つです。

 

私自身も、過去に堀江貴文氏のオンラインサロンや、キンコン西野さんのオンラインサロンに入ってみたことがあるものの、正直あまり良いものではないなと感じました。特に、堀江氏や西野氏が展開するオンラインサロンは人数が多いせいもあってか、基本的にはサロンオーナーがサロンメンバーに殆ど構うことがない印象がありました。

 

それでも、彼らはネット上で「俺はサロンメンバーと一緒に会社を立ち上げた」「僕はサロンメンバーのやってる美容室に行く」など、ごく少数の事例を取り上げて宣伝し、「彼らの事前の説明」とサロンの内部は、かけ離れている印象があると思いました。

実際に彼らがそのような悪意を持って宣伝しているかは分からずとも「入ってみるまで中身が見えない」という設計になっているため、不誠実さを感じる面がありました。

 

また、AIに関する知識を得るためのオンラインサロンなどにも入ってみたものの、長続きはしませんでした。

こちらは、サロンオーナーがちゃんとサロンを運営されており、少人数のものだったこともあって、ちゃんとオーナーとZOOMで顔を合わせて話してもらうこともありましたが、得られる知識量と時間のバランスの悪さなどの問題で持続しませんでした。

良い意味でも悪い意味でも、「抜けようと思うと、いつでもコミュニティを抜けられてしまう」という「インターネット独特の弱さ」がここにあるのかもしれません。

 

「閉じていくインターネット」として、オンラインサロンのような方向性は、1つの方向としては良いのだろうとも思いますが、1つの選択肢でしかありません。

 

・「閉じる方向性としての物理的な距離」

オンラインサロンの他に、もう1つの「閉じる流れ」がインターネット上には存在しています。

 

インターネットによって浅く広く繋がっていただけの人々が、「物理的に近い人達」とつながるためのツールも、ここ数年でいくつも現れてきました。2016年に一瞬盛り上がった「Pokemon GO」などもその1つです。

2023年の今でこそ、ポケストップに人が集まることは多くないですが、見も知らない人々が「ゲームを通じて物理的に合流し、そこに人がいることが感じられる」という点で革新的でした。Pokemon Goのような動きによって地域経済が活性化していく可能性を感じられました。

 

また、「Uber」や「Uber Eats」のように、ネット越しで近所の人に仕事を依頼することも出来るようになりました。

アメリカでは、GAFAによってグローバル化が押し進められた反動として2016年にドナルド・トランプが当選し、海外との交易を遮断するような施策も行われました。「地域へ閉じる動き」が広まりました。

 

そして、「Pokemon Go」や「Uber Eats」のようなものが普及したにも関わらず、インターネットでのコミュニケーションは未だに、物理的な距離が離れた人達を中心に行われがちです。

 

近年では、「Zenly」という、友達同士で常に位置情報を共有サービスも流行ったり、Zenlyがサービス廃止された際に、「NauNau」という個人開発のアプリがAbemaTVをAppStoreのランキングで抜いたりなど、位置情報共有の需要はそれなりに多そうな雰囲気があります。

 

Twitterでは、遠くの人とばかり繋がりがちですが、位置情報を使って10km圏内など近くの人とだけ繋がれるようなSNSが今後流行していく可能性はあるのだと思います。SNSが位置情報でつながるようになれば、実際に会う機会が増えたり、物理的に助け合うことが出来たり、地域独自の文化が復興したり、「単一の言葉しか話さないSNS」から「方言も使われるSNS」へ変化していったりしそうです。

 

世界中で文化が均一化されることには利点もありますが、旅行などした時にどこに行っても同じだとつまらなかったりするので、地域独自の文化が、再度新しいカタチで盛り上がると良いなと私は思っています。

 

また、オンラインサロンのように「いつでも抜けられる」という弱さがないため、地域性SNSは繋がりの強さを発揮する可能性があります。

 

個人で、世界中で使われるようなSNSを作るのは難しいと思いますし、どこかの企業が作ってしまいそうですが、もしどこの企業も作らないのであれば、私もいつか余裕のあるときに位置情報系のSNSを作ることに挑戦したいと考えたりしています。

 

「近所に住んでる知らない人」に、自分の情報が筒抜けになるのは、プライバシーやセキュリティなどの問題が多くありそうではありますが、ある程度の匿名性を保ちつつ、実名制も併せ持てるようなサービスの設計が出来ると良いなと思います。